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装丁談義


by oh-shinju
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装丁楽会だより12-鳥をもチーフにした装丁2点

装丁楽会だより12-鳥をもチーフにした装丁2点

●装丁楽会だより…8に、鳥をモチーフにした装丁は流行っていたのだろうか?という話を描きましたが、わが家の書庫の移動をやっていたら2点ほど出てきたので画像を掲載します。
装丁楽会だより12-鳥をもチーフにした装丁2点_b0072303_16383876.jpg


●尾崎紅葉『草茂美地』(冨山房、明治37年再版)。これはモズの絵だそうです。カラスの絵だだろうと思っていたが、玊睛(きゅうせい)の店長堀口さんから「これはモズの速贄のですよ」と教えられた。その場では「な〜るほど」と首肯いて、帰宅して辞書を引いて見たら、「モズが秋に虫などを捕えて木の枝に貫いておくもの。翌春、他の鳥の餌に供されてしまうとしていう。」(広辞苑)とあった。「垣根にはモズの速贄立ててけり」(散木奇歌集)のように使うらしい。
 
●この絵は一体誰の絵なのかはっきりとモノグラム(サイン)があるが、情けなや、これが読めない。本文中には松洲、半古、清方、米齋、桂舟などが挿絵を寄せているので、この中の誰かではないか、と思って改めて眺めて見たが、わからない。鏑木清方や佐藤松洲、竹内桂舟、梶田半古のサインはすぐに分るので、この中にはいないようだ。これだけの画家が挿絵を描いているのだから、表紙の装画はかなり有名な画家に違いないのだが、残念!わかりません。

●アールヌーボー風の扉の絵も見事だ。この絵には特徴のあるサインが入っているので、佐藤松洲が描いたのはすぐに分ったが、この人のサインはなぜこんな形をしているのかが今だなぞなのである。何をもじったのか、何の略なのか誰か謎を解いてくれませんか。左のバッタの足のところにオレンジ色で○に×印のようなサインがあります。
装丁楽会だより12-鳥をもチーフにした装丁2点_b0072303_16545618.jpg

 
●この本のタイトルも「草茂美地」「草もみぢ」「草紅葉」と頁によって書きかたが違っている。今では考えられないことだが、おおらかでいいなあ、と思う。
 
●もう一冊は、今井柏浦『明治一萬句』(博文館、明治39年)。こちらの鳥はカラスに間違いないと思う。右隅に「羽」のサインがあるが、面目ない、こちらのサインも誰のものかわかりません。この時代の画家で「羽」の字を名前の一字に使う人が全く浮かばない。
装丁楽会だより12-鳥をもチーフにした装丁2点_b0072303_17283343.jpg

●黒田清輝などがアールヌーボー様式を持ち帰ったのが、1900年(明治33年)だから、これ等の本が出た頃、鳥や花がモチーフとしてもてはやされていたのと関連があるだろうと結びつけるのは、さほど強引な結びつけではないようだ。
by oh-shinju | 2006-05-23 16:55