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装丁楽会だより2 櫻井書店と装丁

●櫻井書店の最後の出版物
瀧井孝作装丁、志賀直哉『夕陽』(櫻井書店、昭和35年9月初版)は、戦後、櫻井書店が新たに文学書出版をしようと始めたが、4点を出しただけで終ってしまった、その最後の出版物である。
 
その第1冊目である、瀧井孝作自著自装の『生のまま素のまま』(櫻井書店、昭和34年)で採用したのと同様に瓦当の拓本がここにも使われている。瀧井は第2作目となる『海ほほづき』も自ら装丁し、やはりこの本でも瓦当の拓本を用いている。
 
『夕陽』に使われているのは拓本については、「漢の瓦当の拓本の『都司空瓦』と『朱鳥模様』とを、『夕陽』にふさわしいので用ひたいと思ふ。この漢の瓦当は、僕の近所の八王子の井上郷太郎氏の蒐集から採った。」(瀧井孝作「編集覚書」ー『夕陽』)とあり、瀧井が探し出したものだ。
 

装丁楽会だより2  櫻井書店と装丁_b0072303_13254989.jpg

この判型はフルース角判というらしいが、志賀は「ポケットに入るやうな小型の軽い簡単なものがよい」と希望したようだが、櫻井が、「新書判では、値段のつけやうに困る、志賀さんの本だからやはり立派な本にしたい。それと頁数も多くなつたが、かういふものもこんど一まとめにしておいた方がよいから、このまま一冊にして出したい」と言って、この判型が採用されたようだ。

この大型本でも408頁もあるのを、どうやって新書判に収めようとしたのか。組版についても瀧井は「随筆は段ヌキに組み、談話・放送録音・座談会は二段組」と提案したようだが、櫻井は、「それは、雑誌のやうに見えるから、これは全部同じ活字の組み方にしたい」と、主張櫻井案が採用されている。
 
組版や装丁に関してのやり取りにかんしての記録は少ないので、貴重な話である。編集を担当した瀧井の内容を重視した発言と、発売元の櫻井の商品としての見え方を重要視する、立場の違いからくる主張のぶつかり合いが、何とも面白い。

●豆本と蔵書票の話は「蔵書票楽会」
http://blogs.yahoo.co.jp/higetotyonmage/
をご覧下さい。
by oh-shinju | 2006-04-07 13:25